中国輸入ビジネスに於いて、多くのプレイヤーにとって代行会社の存在は欠かせないと思います。
例外的に個人パートナーと直接取引きする手法もありますが、メリット・デメリットや、規模感・タイミングが存在します。
今回は、単純に比較してみたいと思います。
<個人パートナーのメリット>
メリットとしては、小回りが効いて優先的に扱って貰って無理も聞いて貰えるという事と言われています。
<個人パートナーのデメリット>
デメリットとしては、個人パートナーが病気や事故・ケガ等で倒れると、仕入れや資金が止まってしまい、即終了となってしまう点です。(日本語対応出来る人が本人1人しか居ない)
その為、複数の個人パートナーと契約が必要、その管理も必要で、どのパートナーに何をいつ発注したのか、利益を生まない労務管理が必須となります。また、資金が分散するリスク回避にはなりますが、パートナーにとっては取扱額が限定的で、少額でも親身に対応してくれるかは良いパートナーに巡り合えるかどうかで変わります。
代行会社の場合は、会社と取引している訳ですから、別の担当者がピンチヒッターとして代打を担当するので、ビジネスが止まる事はありません。
以前私のパソコンがクラッシュした際に、日本全国に展開する自作パソコンを扱う某アプ〇イドという大手量販店に修理を依頼し、約束の期日に取りに行くと、店員が『担当者がハワイに新婚旅行に行っているので、完成していない』と言い放ちました。店員も店員ですし理由も理由ですが、私も負けじと『その店員に依頼した訳ではない、会社に依頼したんだ!』と正論をぶつけまして、何とか受け取った事があります。
上記は、会社でありながら、個人のような対応をされた例ではありますが、個人と会社の対応の大きな差があるというものですよね。結局、個人パートナーと代行会社、どちらが良いか?という問題は、集約すると個人か会社かという論点だけになります。会社は看板を背負っているという事。身元が正しく公表されているという事に安心感はありますね。個人はその辺は担保されないにしても、その人次第ですよね。
それでは、実際に細かい点について紐解いていきたいと思います。
<手数料比較>
個人パートナーの手数料相場は平均的に5%程度ですが、代行会社の手数料は5%~7%が一般的な相場ですので、5%の代行会社を選べば手数料は同じになります。日本語習得者の給与相場はここ3年で2倍になっていますが、代行会社の手数料は変わっていません。むしろ競争により下がっていますが、給与相場は今も上がり続けています。個人パートナーと安く契約できたとしても、それが続くかどうかは、競争原理が働かないので、上昇する事は間違いないでしょう。
その為、個人パートナーの場合、頻繁にベースアップや春節前のボーナス要求等、まるで大手企業の春闘のような駆け引きが面倒だと思う人には向かないです。特に代行会社が行っているレンタル社員(オフィス)等には注意が必要です。雇用は各顧客なので、給与は様々ですが、やはり儲かっている会社は大判振る舞いです。他の社員もそれに同調してベースアップを要求し、認めないなら辞めると脅してきます。情報は筒抜けですからね。対応すると思うだけでゾッとします。代行会社の場合は関係ありませんが、
個人パートナーだと自分が対応しなければなりません。要求が通らない場合、国際運送会社の社員と共謀して納期を遅らせたり、通関で止まるような細工をしたりという事例が実際にありました。
代行会社ではあり得ませんが、個人パートナーだと表にも出て来ないでしょう。また、交渉が決裂した場合、また新たなパートナーが見つかるまでビジネスを中止せざるを得ないでしょう。
そうならない為にも、複数の個人パートナーは必要になります。それらの管理が出来るなら、募集や面接の労力も必要ですね。
<国際送料比較>
国際送料は、やはり代行会社の物量には全く敵いませんので、運送会社との契約運賃は代行会社よりも高額となります。(※代行会社提供送料にもよります。)
国際送料は、輸入経費の大半を占めます。代行手数料よりも、見るべき所はココです。そして、同じ国際運送会社でも、週1便の韓国経由混載便と契約している場合もありますので、
注意が必要です。
<国際送金>
大手代行会社の場合、日本国内に銀行口座を持っていますから、送金の度に無料・若しくは数百円の振込手数料で済みますが、日本に銀行口座を持っていない場合、送金額にもよりますが、少額であっても毎回3,000円~5,000円程度の国際送金手数料が必要になりますので、個人パートナーの場合はなるべく日本に口座を持っているパートナーを選びましょう。しかし、日本の口座でも他人名義だったり、日本人名義の口座だったりする場合は、注意が必要です。銀行口座を他人に使わせるのは違法です。留学生が帰国時に口座を転売するケースは良くあるのですが、発覚した場合、口座凍結⇒資金凍結、犯罪資金移転防止法により、警察では無く警視庁から容疑者として任意事情聴取を受けるなど、かなり面倒な事になります。起訴されることはありませんが、全ての指の指紋を取られ、複数枚のモンタージュ写真撮影、携帯電話のデータを全てコピーされ、約半日拘束されます。大体半年以上は、資金の引き出しは出来ないと思った方が良いでしょう。脅しでは無く体験談です。飛んだとばっちりですね。また、ここ数年、マネーロンダリングや犯罪資金移転防止法の施行によって、海外送金の額や回数によって、銀行から頻繁に調査が入ります。調査が完了する迄の間、送金を止められる事になります。代行会社のような法人であればそのような事があれば代行会社の問題ですが、個人の場合、自分で調査に協力しなければなりません。規模が大きくなればなる程です。これまでに幾度も泣きつかれ、個人パートナー宛に資金移動を頼まれましたが、当然違法なので全て断っています。更には、税務調査同様、調査に協力したからと言って、経費や人件費が支給される訳も無く、貴重な時間と労働力を搾取されます。このような事が幾度起こっても、乗り越えて行く覚悟や処理対応出来る体制かどうかも判断基準となります。
<機密保持契約>
個人パートナーの場合、一応契約しておいた方が良いでしょう。ただ、紙切れ程度の効力しかありませんが、罰金等も決めておくべきでしょう。
しかし、履行された場合、裁判しますか?という話になります。国境を越えるので、どんな凄腕の弁護士を雇ったとしても外国人に勝ち目は無いです。
そして、パートナーがミスをした時に、賠償では無く、他の顧客の売れている商品情報や優良な仕入れ先を教えるという取引を持ち掛けられる事も良くあります。
個人パートナーには、充分な待遇で迎え、機密保持手当(口止め料)も計上しておくべきです。守ってくれるかどうかは保証がありませんが。
<名ばかりの個人パートナー>
個人パートナーの場合、貴方一人だけでは当然、食べて行けませんから、多数の顧客を抱えて、順番に対応する訳です。
また、日本語が出来て貿易経験のある優秀な中国人は希少ですので、
人気のある個人パートナーに仕事が集中しますから、当然外注(スタッフ)を雇う流れになります。
対応自体は、個人パートナーが対応しますが、実際には個人パートナーが指示して、外注スタッフに丸投げになります。
そして徐々に規模が大きくなり、小さな代行会社と何ら変わらないのです。自分だけの専用パートナーと満足感に浸るのも良いですし、他のライバルとは違う動きを意識する方もおられると思いますが、実際は個人パートナーという名の小さな代行会社なのです。実態を知らずして、ビジネスを行うのは危険です。
代行会社の場合でも、極端に対応速度が遅い会社が多数存在しますので、その場合は論外ですが、レスポンスと納期の早い代行会社を探しましょう。特に、物量が多い場合、検品スタッフを多く抱えている代行会社の方が、検品品質もスピードも人海戦術で処理するので、検品品質が一定ですが、個人パートナーの場合、同じ商品を膨大に仕入れて検品すると時間が掛かる為、その時だけその辺の浮浪者を雇って検品するケースもあり、検品がいい加減になる傾向にあります。
総じて、月給で雇い、現地事務所を借りて社員として仕事をして貰うなら別ですが、出来高制の個人パートナーとは、実際には名も無き代行会社という事は殆ど誰も言及されていません。また、そのような小規模事業者は、税金を支払っていない、税務署に開業届けを出していないケースが殆どです。摘発されたその日からパソコンを押収され、電気が止められ、銀行口座は凍結されますので、事実上廃業に追い込まれて連絡がつかなくなります。
<レンタル・オフィス>
レンタルオフィスを提供している会社がいくつかありますが、私がプレイヤー時代に現地オフィスに行った時、見てしまったんです。ガラス戸で仕切られたオフィスには天井にまで届く程の荷物が積まれ、中に人は居ませんでした。聞くと、出勤せずに自宅で仕事しているとの事。しかも、自分で他のお客さんも募集して、荒稼ぎしているとの事。勤怠管理など、一切されていませんし、その社員の時間に高い給料払いながら、社員は雇い主のライバルの為にせっせと働いているのですから、空いた口が塞がりませんでした。他のレンタルオフィス社員にも伝染しますよね。レンタルオフィスに罪はありませんが、管理会社の問題ですね。
<信用>
個人パートナーを決める際には、skypeやwechatのTV電話で面談する訳ですが、私なら日本国内で、日本人のパートナーをネットで探す事すら不安です。対価報酬とは別に、生命線の仕入れ資金を先に預ける訳ですからね。これは、外国人だからという括りでは無く、日本人にも外国人にも良い人も居れば悪い人も要るという、ごく一般論のお話です。その人が信用出来ても、その周りの人も信用できますか?親戚に博打打ちがいませんか?病気や事故で急に大金が必要になった時は?その時は信用出来ても、人は変わるものです。また、中国は投資案件が豊富ですから、パートナーが騙されてしまう事もあり、不本意ながら音信不通にならざるを得ないケースもあります。大金を掴んだ時や、窮地に追い込まれた時、人はどう行動するのか予測がつきません。一度でも少額の資金を誤魔化しに成功すれば、多くの場合、再度やってしまいます。そして段々と金額が増え、大胆になって行きます。大袈裟に聞こえるかもしれませんが、世の中に良くある話です。そんな事を言ったらキリが無いと思うかもしれませんが、パートナーを組むというのは、運命を共にするという事ですし経営者ならリスク管理は当然の事です。いずれ、必ずバレるのですが、その時には、資金回収もほぼ出来ませんし、何より事業は止まり、新たなパートナーを見つけて、ゼロから教えて立て直さなければなりませんので、事業拡大どころではありません。
ネット上には出回っていないだけで、一見すると問題無いようですが、実際被害に合った方がネットに公開しても、恥を晒すだけですから、わざわざ公開しませんよね。そんな暇があったら少しでも挽回する方に力を注ぐはずです。実際飛ばれた話は良く聞きますし、良く相談もされますので、氷山の一角で、表に出ていないだけです。
基本何でも自己責任の時代ですが、それでも、個人パートナーを選ぶ際には、最低でも現地で面談をお勧め致します。突然音信不通になるのは避けたいですし、最低限、出身地や親戚・家族の住所も聞いておくべきです。交通費や時間、労力を注ぎ込んで、不採用なんて事も有り得ますので、余程資金に余裕のある方限定ではないでしょうか。
上記は、相談を受けた事例です。数ヶ月に1度はこういった相談がありますが、こういった事例はほぼ出回りません。なぜなら、こんな失敗を公表するメリットが無いですし、
SNSやブログに書いても、ブランディングが下がるのでデメリットしか無いです。こういったリスクに怯えながら取引きするのは、もはやビジネスというよりギャンブルになります。
<納税しているかどうか>
輸出入に係る未納税の個人・法人を取り締まる法律が2019年に施行されました。ごく最近の話です。昔と今は状況が刻々と変化しています。昔は通用していても今は再現性が無いのです。
未納税が発覚すれば即時業務停止、場合によっては拘束か夜逃げとなれば、全く音信不通になります。脱税は違法ですので、いくら本人にやる気があっても、価値観の違いによって、本人が意図しない空中分解も有り得ます。
勿論、日本の会社でも日本で粉飾決算や脱税をしていれば、同じ事ですけどね。信じられない事に日本の会社でも脱税(脱税というよりは詐欺)をHPで推奨している代行会社もあります。
<まとめ>
もちろん、全ての個人パートナーが良く無いという事では無く、まじめに営業している方もいますし、個人パートナーで成功されている方もいます。まずは、代行会社を片っ端しから使ってみて、やはり合わないという方は、選択肢に入れて見ても良いのでは無いでしょうか。
表面的には個人パートナーでも、実態は、HPや看板も出していない代行会社(個人パートナー)と、HPがあり日本に事務所のある代行会社と、どちらと取引きしたいと思いますか?
個人パートナーの方が安くて、融通が利くというイメージが先行しているようですが、本来しなくていい作業をしないといけなかったり、リスクと労力、メリットを天秤に掛けた場合、あまりにも効率が悪いと思う方は代行会社一択になると思います。
今回は、代行会社を経営している立場から、若干偏った内容になってしまいましたが、個人パートナーで成功する事は不可能では無いですが、かなりリスクとハードルが高いという事は、お判り頂けたと思います。
実際、資金を預けられる程信用が出来るのなら、中国輸入よりも、代行会社を一緒に始めた方が良いですよ。そう思いませんか?
なぜ、そんな話にならないのか、それは、そこまで信用していなくて、恐る恐るリスク承知で取引きしているようにしか思えません。いつ飛ばれるのか?
そんな腹の探り合いしながらビジネスを行うのは正直しんどいと思う方は避けた方が無難かもしれません。
代行会社も色々ありますし、相性もありますので、使ってみなければ判りませんが、最近はサービス競争も激しく、レスポンス、検品、梱包、価格もかなり高レベルなので、(全てがそうではありませんが・・)ご自身に合った代行会社や個人パートナーが見つかると良いですね。